中国の武漢に端を発する、新型コロナウィルスの猛威は、
今や全世界を駆け巡り、日本にも緊急事態宣言が発令されてしまいました。
鍼灸師として、この新型コロナウィルスのために何かできないことはないかと思い、
この記事を書くことにしました。
記事を書くにあたり務めたのは、
簡易であって誰でも自分でできること、科学的な根拠があり効果がはっきりと認められたものであるということです。
世の中には「健康のために良い!」と謳った療法や商品があふれかえっていますが、
実験を重ね、なぜ健康に良いのか?という科学的裏付けが取れているものは少ないのです。
鍼灸も人への免疫力をあげることが立証されていますが、
「誰でも簡単に自分でできる」という条件には当てはまらないので、
原則ここでは割愛していきます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/56/5/56_5_767/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/59/1/59_1_2/_pdf
免疫力を高める、簡単で自分でできる三つの方法
まず、私たちがよく聞く 免疫力 とはなんでしょう。
免疫力とは、広義には健康であると実感できる感覚、病気などで体調を崩さない、痛みなど不快な感覚がないといえます。
狭義には、血液中の白血球などの働きが活発になり、
外から体内に侵入したの病原菌、ウィルスを攻撃し、症状が激化しないようにする働きのことです。
新型コロナウィルスに感染しても、症状が軽症で治ってしまう方は、
この 免疫力が強い ということになるでしょう。
この白血球の遊走性が高める方法が、科学的に血液検査などで立証されている方法を、
三つご紹介します。
簡単にできます。誰でもできます。
ぜひ、実践してください。
1、透熱灸
2、チクチク体操
3、M4 浅刺呼気座位での皮膚刺激(+M6 手足の末端の骨格筋に対するパルス通電)
1、透熱灸(原志免太郎著 『お灸療法』より)
【方法】
足の三里、仙骨上に2~8ヶ所、各2~7壮の施灸 大体毎日 水泡や火傷跡が残らない程度
【注意点】
やる過ぎると逆効果なので、少量を毎日続ける。
お灸は私の鍼灸院でもよく使いますが、ほとんどが肌を焼かない気持ちのいい温熱灸です。
しかし、白血球の遊走性を高めるためには、
温熱灸よりもやや熱めの、肌を焼くお灸が必要のようです。
原志免太郎著のお灸療法によりますと、
2~8ヶ所くらいに2~7壮(お灸に火をつけて燃やすと1壮とカウント)施灸すると、
血液中の白血球の遊走性が高まり、免疫力が上がるのだそうです。
しかも、効果は持続的で、毎日行うとお灸のしない日であっても、白血球の遊走性が活発である状態を維持できるのだそうです。
赤血球の量も増えるので、造血作用も認められたとのこと。
また白血球の貪食作用(ウィルスなどを取り込む力)も上がるそうです。
ウィルスに負けない免疫力を獲得するためには、
正にうってつけではないでしょうか。
自分で自分にやるのでしたら、足の三里がお勧めです。
場所はすねの筋肉の上、ひざのやや下あたりで押して気持ちのいい硬いところです。
足の三里は松尾芭蕉が全国行脚したときに、自分で施灸していたことでも有名です。
また第二次世界大戦の時に、日本軍が行軍をするときに、
足の三里にお灸をしたグループのほうが疲労感が少なく長い距離を行軍できた、との話もあります。
足の三里は胃のツボでもあるので、
胃腸が健康になれば食事からの栄養吸収効率も上がります。
白血球の遊走性を高めるために肌を焼くことが条件なので、多少ツボから外れても効果は薄れません。
火傷や水泡ができてしまうと化膿することもあるので、
本著には「水泡ができない程度」、と記載があります。
しかしあまりぬるすぎても効果は認められないので、どのくらいが自分に適しているのか、
調整しながら施灸しましょう。
手軽なところでは、せんねん灸のレギュラーを使ってはいかがでしょうか。
皮膚を焼くとたんぱく質が編成し、「火傷毒素」というものが血管の中に名入り混むのだそうです。
その火傷毒素を排斥しようと、白血球の遊走性が高まるのだそうです。
足の三里以外ですと、仙骨上もお勧め。
仙骨周囲には胃腸に伸びる副交感神経節があるので、ここを温めると胃腸が活発に動きやすくなり、
栄養の吸収が高まることが期待できます。
思い出したようになるのではなく、
こまめに毎日やっていくのがいいようです。
身体に良いからとやりすぎるのは逆効果。
少し少ないかも?というぐらいを毎日するほうがいいようです。
2、チクチク体操
【方法】
手足の指の爪の横を、爪楊枝などでちくちくします。
【注意点】
出血しないようにします。
正確な名前は 無血刺絡療法(むけつしらくりょうほう)といいます。
長田裕著 『無血刺絡の実際』 『無血刺絡の臨床』 を参考にしています。
爪の横をチクチクすると、白血球の遊走性が高まることを、
血液検査により確認しているそうです。
わかりにくいですが、爪の横の赤い印のところ(井穴:せいけつ)を、
ちくちくします。
足の指の同じところも、ちくちくしてください。
もともとは長田裕先生の前に、安保徹先生の井穴刺絡療法(せいけつしらくりょうほう)という理論があったのですが、
安保先生は晩年、井穴(手足の指の横にあるつぼ)から刺絡(しらく:血を出すこと)をしなくても、
爪の横をもむだけで免疫力が上がるとおっしゃてました。
http://ikikatajyuku.kyu-mat.com/meneki.html
長田先生は安保先生の研究を追試した形になります。
爪の横を揉んだりチクチクしたりすることは、いつでも簡単にできます。
ぜひやりましょう!
ただし、やり過ぎて傷を作ってしまうと感染するリスクが上がってしみます。
やり過ぎて傷を作らないようにしましょう。
3、M4(メカニズム NO,4)浅刺、呼気、座位
【方法】
副交感神経の働きを高めるための方法。
座った状態で、前腕の皮膚に、呼気時に合わせて刺激を加えると、副交感神経が高まり、
治す力が高まる。
【注意点】
特になし
西條一止先生の自然鍼灸学による
http://nishijokazushi.com/category/1232879.html
西條先生は、自律神経の交感神経と副交感神経を刺激し分ける方法を見つけました。
生理学に基づいた理論で、再現性の高い方法です。
また、瞬時心拍数を観察することによって、自然鍼灸学の理論を構築しました。
自律神経は交感神経と副交感神経によって成り立っていますが、
このうち副交感神経の働きが、免疫力をあげるのにとても重要な役割を持っています。
胃腸の原ら気を活発にし、冷えを取り除き、筋肉が程よく緩んだ状態を作るのは、
この副交感神経の働きによります。
つまり私たちが健康だと実感できるのは、この副交感神経の働きが十分になされているときなのです。
副交感神経の働きを高めていくためには、
深呼吸がよく知られています。
西條先生は通常の深呼吸よりもさらに効果的に、副交感神経を高める身体のメカニズムを発見しました。
それが、浅く刺す、座った姿勢、皮膚刺激です。
椅子に腰かけた姿勢で、手を膝の上などにおいてなるべく筋肉が働かない状態で、
前腕の皮膚に、吐く息に合わせて軽く刺激をする。
この時に副交感神経がグーっと高まり、
免疫力を高める手伝いをします。
急性のぎっくり腰の痛み、緊張などで呼吸が浅くなっているときなどにも、大変効果的です。
副作用が一切ないので、
電車の中、オフィス、自宅など場所や時間を選びません。
もちろん寝る前にやるのも効果的ですね。
…実はこのM4とセットですると効果的なのが、M6(メカニズムNo,6)です。
これは手足の末端の、関節をまたぐ骨格筋に鍼を置き、1Hzの周波数の電気通電をします。
これにより交感神経の過緊張が緩みやすくなるので、慢性的な筋肉の硬さを緩めたり、痛みをとることができます。
ただし鍼とパルス通電が必要なので、ここでは割愛します。
以上かんたんにざっくりとではありますが、
免疫力をあげるためにできる簡単で確実な方法を三つ、ご紹介しました。
新型コロナウィルスは、繁殖力の強さから感染を拡大させています。
しかし、症状が悪化せず、市販の薬で抑えられる程度の状態から、完治する方も大勢います(8割くらいといわれてます)。
衛生面に気を配り、感染しないようにすることは大事ですが、
免疫力をあげて、ウィルスに負けない身体を作っていくことも、
同じように重要です。
ウィルスから身体を守るだけではなく、
免疫力を強化して、迎え撃つくらいの気持ちで立ち向かっていきましょう。
攻守攻防は一体です。
受けの技、攻撃に特化した技はありません。
受け即攻撃、攻撃即受けが、敵(ウィルス)から身を守るのです。
免疫力を高めて、積極的にコロナウィルスと闘いましょう!
また、少しづつ改定していきます!
院長/飯田耕平