港区の赤坂で、
鍼灸により自律神経系の症状を専門に治療している鍼灸院、
パナケア赤坂院の院長の飯田です。
先日新たに、鬱病の治療の仕方のトピックを立てましたが、
私も始めから鬱病の治療がうまくいっていた訳ではありません。
身体が重くて怠くて、会社にも行けない。
家事も出来ないくらい辛い。
家から出られない、
というような重症の鬱病の方のお宅に出張治療などもしていましたが、
鍼灸治療をすることでかえって症状を重くしてしまったことも何度かありました。
これはなぜかというと、
鍼灸治療は筋肉を緩めたり、自律神経の副交感神経(リラックス)を活性化することが得意な治療なのですが、
鬱病の患者様にはこの副交感神経の強い高まりが裏目に出てしまうことがあるのです。
鬱病というのは、
始めは交感神経(緊張)の異常な高まりから始まります。
仕事や家事、育児などでストレスが溜まり、
その状態が長く続くと、
いつも交感神経が高ぶった状態になり、
眠れなくなったりイライラしたり、肩や首が痛くなり、寝ても緩まなくなったりしてきます。
ちょっとした物音や声に反応して心臓がばくばくしてしまったり、
訳もなく涙が出たり、感情が抑えられなくなったり。
マッサージをしても身体が緩まなくなるのもこの時期です。
こうなると黄色信号です。
そのような交感神経が暴走している状態が長く続いていると、
暴走した交感神経に同調して、
ある時、副交感神経も異常に高まってきてしまいます。
そうなると今度は一転して、
強い怠さや眠気、無気力感が襲ってきます。
自分ではどうにかしなきゃと思いつつも、
どうにもこうにも身体が動かない。
鉛のように身体が重く、言うことを聞かない。
自分の身体が、自分のものではないような感覚。
これが鬱の症状です。
つまり、
鬱病とは異常に高まった交感神経に同調して、副交感神経の働きまでもが暴走している状態なのです。
この様な状態の患者様に、
副交感神経だけを刺激するような治療をしては、逆効果。
よけいに症状が重くなってしまうのです。
では、どうしたら良いか。
それは、
副交感神経と交感神経を交互に刺激してあげることが重要なのです。
まず軽く指圧をすることで身体の余分な緊張をとり、
治療に対する準備をします。
その後に灸頭鍼という鍼の上にお灸を乗せる方法で全体を緩め、
副交感神経を高めます。
その後に仰向けで手足の要穴に鍼を置き、
パルス通電をしていきます。
通常は15分程度ですが、
治療の進行度合いやその日の体調により5〜15分と時間を変えていきます。
なぜかというと、
この仰向けでのパルス通電が交感神経を刺激するので、
強すぎてしまうとまた症状が悪化するからです。
鬱病は自律神経の働きが暴走している状態です。
正常な働きをしていません。
ですので、
仰向けでのパルス通電も、
体調によって刺激量を返るのが効果的なようです。
私が昔、鬱病の鍼灸治療で失敗してしまったのは、
自律神経の片方しか刺激しなかったために、
自律神経の働きそのものが改善していかなかったためなのです。
片手落ちの治療でしたが、確かに直後は症状が緩和されます。
しかし、
交感神経と副交感神経の両方に働きかけが出来ない治療は、
とてもリバウンドを起こしやすいのです。
つまり、症状が戻りやすい。
今軽くなった肩こりや腰痛の症状も、
すぐに戻ってしまう。
そうなると鬱病の患者様は、症状がすぐに戻ってしまったことで更に落ち込んでしまうのです。
鬱病に限った治療の原則ではないのですが、
自律神経のバランスが崩れていることによって起こる諸症状には、
交感神経と副交感神経の両方を刺激する治療が重要なのです。